01 くじけそうになった一年目
「心臓手術の場に技術者が入ることができるんだ」。高校時代、授業で臨床工学技士の話を聴き、心臓の手術に関わる仕事をしたいとこの道に進みました。大学卒業後、当院に入り、配属されたのは手術センターです。当時、臨床工学技士が手術室に常駐することはなく、私がその第一号となったのです。手術室は病院の中でもいちばん医療機器の多い場所で、しかも多職種の業務が交錯します。そんな場所に新卒の技士がひとりで放り込まれ、何をしていいのかわからず戸惑いましたが、多職種の方々に助けられながらひとつずつ業務を立ち上げていきました。手術室では機器にトラブルが起これば手術そのものが中断するため、その場で問題を解決しなければなりません。「早く直して!」と緊迫した空気に吞まれ、戦々恐々とすることもありました。右往左往して叱られたこともあります。そんな日々がつらくなり、オペ室での仕事が嫌になった頃、見学に来られた他病院の方に声をかけられました。「一年目の君に手術部のような重要な業務を任せるということは、それだけ信頼されているのだから腐らずに続けなさい」と。その方の言葉が励みになり、無我夢中で目の前の仕事に取り組んで3年。ようやく手術室での役割が認められるようになりました。そこから10年、手術センターの医療機器管理に関わっています。くじけずに続けて本当によかったと思います。

02 麻酔科業務のタスクシフトとタスクシェア
今年4月から、当院でも麻酔科業務の負担軽減を目的としたタスクシフト/シェアが始まりました。私もその支援に携わっています。麻酔科医は手術の数だけ必要ですが、その数は全国的に減少しています。その中で、機器の操作に長けた臨床工学技士が麻酔機器の管理を担うことで、医師は患者さんの全身管理により集中できるようになります。また、私たちが手術準備を担当することでオペの開始が早まり、手術時間の短縮にもなります。これは手術室の回転率向上やスタッフ全体の労働時間の削減になりますし、なにより患者さんの負担軽減につながります。実際に、先生方から「手術がスムーズに進むようになった」「術後や術前の患者さんへのフォローに時間を割けるようになった」といった声もいただいており、やりがいを感じています。さらに、タスクシェアの一環として私自身も術後に患者さんと接する機会が増えました。これまで患者さんと話すことはほとんどなかったのですが、患者さんから「ありがとう」と言われるとうれしいですね。仕事の大きな励みになっています。

03 リーダーとして心がけていること
今、臨床工学技部の人数は30人、そのうち手術部門は10人です。私はその手術部門でリーダーをしています。リーダーの仕事のひとつが医療機器の点検と購入です。手術室にある機器はおよそ300台。それらを毎年点検することは重要な業務のひとつです。また、年々高度化する医療機器をどのタイミングで更新していくのかを、外科の先生や他職種の方たちと連携しながら検討します。機器が混在しないように、無駄のない購入を心がけています。もうひとつの役割が手術部門のメンバー育成です。ルーチン業務は指導しますが、基本的に任せるようにしており、多くの職種の方とのコミュニケーションを大切にするよう伝えています。入職して14年になりますが、今も変わらず大切にしているのは『どんな小さな相談も親身になって聞く』というポリシーです。小さなトラブルでも、相談されたら真剣に耳を傾けるようにしています。それがやがて実を結ぶと実感しているからです。人は自分がしてもらったことや、かけられた言葉をよく覚えているものです。チーム医療の根幹はそうした小さなやり取りの積み重ねにあり、人の命を預かる仕事において、周囲に相談しやすい空気をつくることはとても大事なことだと思うのです。
PROFILE
兵庫医科大学病院 臨床工学部 係長
臨床工学技士 手術部門リーダー
多和 大樹 Daiki Tawa
体外循環技術認定士、3学会合同呼吸療法認定士、手術関連専門臨床工学技。2011年 広島国際大学保健医療学部卒業。同年 兵庫医科大学病院臨床工学部に入職。専門業務は手術室業務、人工心肺業務、補助人工心臓業務など。仕事がオフの日は、子どもたちと川遊びやポケモンカード、奥様とワインなどの晩酌を楽しむ




